「こぼれ落ちた砂~無戸籍のまま生きて」は、月刊フォアミセスに掲載されている短期集中連載です。河崎芽衣先生による作品です。
タイトル通り、戸籍がないまま生きてきた女性・橘花音(たちばなかのん)が主人公です。
22歳の花音は恋人の陸斗(りくと)にプロポーズされますが、別れを告げたうえ姿を消しました。しかしその後妊娠していることが分かります。
同居人で雇い主でもあるスナックの渚(なぎさ)ママに、無戸籍であることと、妊娠していることを打ち明けますが、戸籍がない自分が赤ちゃんを産んだらその子はどうなるのかという不安は消えないままでした。
今回は第2話のあらすじと感想、最終回の一部ネタバレを書きました。
なお、前回のあらすじはこぼれ落ちた砂~無戸籍のまま生きて~第1話あらすじ&感想。
に書いています。もしよければそちらもご覧ください。
「こぼれ落ちた砂~無戸籍のまま生きて~」第2話あらすじ
妊娠が分かり悩み続ける花音。そんな花音に、渚ママは病院受診をすすめる。戸籍がないし保険証もないから病院は無理と拒否する花音。
しかし渚ママは、「保険証がない場合は全額自己負担になるが診察はしてもらえる。何よりこれは赤ちゃんだけではなく花音の命にもかかわる問題だ」と言い、病院受診に同行した。
病院へむかう道中、花音は渚ママに、陸斗と出会ったきっかけを話す。2人が出会ったのは図書館だった。
2年前のこと、無戸籍のことを調べたくて花音は初めて図書館に行った。本が多く、どこに何があるのか分からない、難しい本が多いと迷う花音は、そこで1冊の絵本を見つけた。子どものころによく読んだ絵本。なつかしさのあまりその場で朗読してしまう。そんな花音をやさしく注意したのが陸斗だった。
花音の朗読をきいた子供が「続きを読んで」とせがんできた。陸斗は花音を児童コーナーに案内し、小さな声で朗読することをすすめた。子どもたちに絵本を読む花音。
そこで陸斗は、花音に読み聞かせのボランティアへの参加をすすめる。私でよいのかと一瞬ためらったが、実際にボランティアに参加するうち、子どもたちの楽しそうな顔に喜びを感じるようになった。
そして花音は陸斗から交際を申し込まれた。それをきっかけに夜の仕事をやめて、お弁当屋さんで働きはじめた花音。陸斗との時間は幸せで、ほんの少しの間だけ夢を見ていたいと思うようになった。
でも結局夢は夢なのだと花音は渚ママに告げる。私は陸斗と結婚できないし、誰かと生きていく人生はない。花音の顔にはあきらめの顔が浮かんでいた。
病院で診察を受けたところ、花音は妊娠12週目だった。赤ちゃんの心音も聞こえ、超音波検査では姿がはっきり見えていた。感動する花音だったが、医師の「次回の健診までに母子手帳をもらってきてください。役所に提出するための妊娠証明書を書きますね」との言葉に動揺する。
スナック渚に戻った2人は今後どうするかを話し合う。母子手帳がないとダメなのかと悩む花音。役所に相談してみようと言う渚ママに対し、花音は、戸籍がないから無理、私は産まないと言い放つ。
「生まれてもこの子は戸籍のない子供になる」、「私を同じ思いをするだけだ」、「私には乗り越えられない壁があってどうしようと悩むことも許されていない」と告げ、花音は店を後にする。近くの海岸で、「生んであげられなくてごめんなさい」と赤ちゃんに謝る花音。
どうしたら花音を救うことができるのか?と1人考える渚ママの前に、突然陸斗が現れた。人を探していると言い、花音の写真を見せる。その人とはどんな関係なのかと渚ママがたずねると、陸斗は、
婚約者です 大切な人です
とはっきり答えた。陸斗は花音を探し続けていたのだった。あきらめることなく。
数日後、閉店したスナックに陸斗が現れた。花音を見つけ、「ちゃんと話し合おう」と切り出す。渚ママが陸斗を店に呼んだのだ。もう逃げるな、このままじゃ前に進めない。この人には本当のことを知る権利と義務があると花音に告げた。
そこでようやく、花音は陸斗に本当のことを告げた。戸籍がないこと、学校に行っていないこと、夜の仕事で生きてきたこと、陸斗に嫌われたくなくて嘘をついていたこと。だから陸斗とは結婚できないことも。
でも花音が陸斗を好きな気持ちに嘘はない。一緒にいると幸せだった、たからものの時間だった、ずっとこの時間が続いてほしいといつも願っていた。
だけど自分は、もし明日突然死んでしまってもどこの誰かなのか証明できない人物。結婚なんてありえない。だから自分のことは全部忘れてほしいと花音は陸斗に涙ながらに訴えた。
その直後、花音の体に異変が起こる。急にお腹が痛み出したのだ。そこで初めて陸斗は花音が妊娠していることを知る。病院に運ばれた花音。幸い赤ちゃんは無事だった。花音は迷いを捨て、赤ちゃんを産んで育てると決心した。
渚ママに協力を頼む花音。そこに再び陸斗が姿を現す。「ずっと苦しんできたのを気づいてあげられなくてごめん」、「もう1人で抱え込むな。これからのことは一緒に考えよう」と伝える。
その上で陸斗は、「僕は自分の子どもを戸籍のない子にはしない。だから花音の戸籍を作るんだ」と告げる。「大変かもしれないけど、絶対に花音の戸籍を手に入れよう」、「そして結婚して、赤ちゃんを戸籍に入れよう」、「だから花音もあきらめないで闘うんだ」と力強く訴えた。
「こぼれ落ちた砂~無戸籍のまま生きて~」第2話感想
何よりもまず、陸斗が花音のすべてを理解してくれてホッとしました。花音が陸斗を愛しているように、陸斗も花音を深く愛しているんですね。だからこその「闘うんだ」という言葉。個人的にはこの言葉が第2話の中で一番印象深いです。
第1話を読んだ後、私は、無戸籍者が戸籍を得る方法をネットで調べました。正直に言うと、難しすぎて混乱しました。役所や法務局、場合によっては裁判所にまで足を運ぶ必要がありますし、書類も色々用意する必要がありました。
今花音は母親と絶縁状態ですし、法律上の父親には会ったこともありません。そんな中で花音は戸籍を作ることができるのかが気になります。幸い花音には、陸斗と渚ママという大きな存在がいてくれます。これからは少なくとも1人で悩むことはないでしょう。
それにしても陸斗が花音の全部を受け止めてくれる人で本当によかったです。花音の実の父親は恋人、つまり花音の母親の妊娠を知った途端に姿を消した人物です。もし陸斗が花音の無戸籍問題を知って同じように逃げてしまう人だったら花音は絶望のどん底につきおとされたでしょう。そうならなくて本当によかったとホッとしています。
このお話は短期集中連載なので、来月で最終回です。ますます目が離せません。
「こぼれ落ちた砂~無戸籍のまま生きて~」最終回一部ネタバレ
戸籍を作るなんて本当にできるの?と考える花音。陸斗とともに自分の戸籍を作るため動きます。
花音が意を決して向かった先で待ち受ける衝撃の事実とは!?
先ほども書いたように、戸籍を作ることは簡単なことではありません。手続きの難しさにぶつかるかもしれないし、実母や戸籍上の父親と対面し辛い思いをするかもしれません。
予告編にある「衝撃の事実」は、両親に関係することではと考えました。でも今花音は1人ではありません。そこが救いです。戦いの末、戸籍を得られるように願っています。
ネタバレとは違いますが、法務省のホームページには「無戸籍者の婚姻について」も書かれていました。戸籍を作るに準ずるような手続きが必要ですが、その手続きを行い、必要な書類を提出して婚姻の要件を満たせば婚姻届けは受理されるようです。
このことを2人に伝えたいとお節介なことを思う私でした。
「こぼれ落ちた砂~無戸籍のまま生きて~」第2話まとめ
- 無戸籍者である自分が赤ちゃんを産んだらその子も無戸籍になると、悩む花音
- 渚ママの勧めに従い病院を受診。花音は妊娠12週目と診断され、赤ちゃんの存在を感じる
- しかし自分には戸籍がない。母子手帳ももらえない。役所に相談しても無理だと思う
- 花音は赤ちゃんを産まない決心をする
- 花音を探し続けていた陸斗。渚ママの計らいにより2人は再会する
- 陸斗に全てを打ち明ける花音。その直後体に異変が起き、病院に運ばれる
- 赤ちゃんが無事だったことを知り、花音は産む決心をする
- 陸斗は花音に、「花音の戸籍を作るんだ」、「あきらめないで闘うんだ」と告げる
ついに再会した花音と陸斗。花音の戸籍を作るために一緒に動くことになります。
花音は無事に戸籍を作ることができるのか?赤ちゃんは無事に生まれるのか?陸斗との結婚はかなうのか?
次回はいよいよ最終回。フォアミセス発売日は8月3日。心して最終回を読もうと思います。
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