こぼれ落ちた砂~無戸籍のまま生きて~第1話あらすじ&感想。

先日、久しぶりに漫画雑誌「月刊フォアミセス」を買いました。そこで目が離せない作品に出合いました。それが今回紹介する、「こぼれ落ちた砂~無戸籍のまま生きて」です。

人気漫画家・河崎芽衣先生による短期集中連載で、タイトル通り、戸籍がないまま生きてきた女性の物語です。

ぜひ紹介したいと思い、今回ブログに書くことにしました。どうぞご覧ください。

「11年後私たちは」シリーズは、お休みします。ご了承ください。

「こぼれ落ちた砂~無戸籍のまま生きて~」第1話あらすじ

主人公の花音(かのん)は、恋人の陸斗(りくと)にプロポーズされる。嬉しさのあまり涙する花音だが、その翌日、陸斗の前から姿を消した。「ありがとう さようなら」というメモを残して。

1か月後、花音は「スナック渚」で働いていた。笑顔で元気に働く花音。スナックのママ・渚との関係も良好だった。花音はここで住み込みで働いている。花音が働くことになった時、訳ありな雰囲気を感じた渚ママだったが、放ってはおけずに採用したのだ。元気に働く花音だが、陸斗のことを忘れられずに、会いたいと願う。

その晩花音は夢を見た。陸斗が自分を探しに来てくれたのだ。喜ぶ花音だが、次の瞬間目の前に現れたのは母親だった。

どんなに望んでもおまえに普通のしあわせは手に入らない あきらめて生きるしかないんだよ

こぼれ落ちた砂~無戸籍のまま生きて~第1話より引用

と夢の中で花音に告げる母。目覚めた花音は、そのことを自覚している様子だった。


渚ママと2人で朝食をとっていると、顔色が悪いと指摘される。寝不足のせいか、ここ数日体がだるく体調がよくないのだ。病院に行くようすすめられるも、絶対に病院には行かないと言う花音。「私は宇宙人だから、自分で治せるの。というか、透明人間かも」とつぶやく花音。

その後花音は、2ヶ月も生理がないことに気づく。もしかしたらと思う花音。その時、目の前に陸斗が現れた。急にいなくなった理由を問いただす陸斗だが、花音は走って逃げてしまう。

店に戻った花音は、持っていた妊娠検査薬を使う。やはり妊娠していた。陸斗との子だ。

花音いわく陸斗は、

私にはもったいないくらいの 陽の当たる場所にいるあったかい人

こぼれ落ちた砂~無戸籍のまま生きて~第1話より引用

その夜、店が終わった後、花音は店を出ていこうとしていた。陸斗に見つかることを恐れていたのだ。その時渚ママが声をかけた。「自分だけで抱えていないで全部話してごらん」と花音に告げる渚ママ。

意を決して花音は自分の秘密を打ち明ける。

花音には戸籍がないのだった。

話は花音の子どものころにさかのぼる。

狭いアパートで母親と2人暮らし。母は夜の仕事をしており、その間花音は1人で留守番をしていた。絵本だけが花音の友達だった。そして花音は学校に行っていなかった。母親は花音に、学校は頭が悪い子供がいくところ、花音はかしこいから家で勉強するのだと伝え、自分で読み書きや計算を教えていたのだ。

いっぱい勉強したら大きくなったらなんでもできるんでしょ?とたずねる花音に、母親は冷たく「おまえにはできることなんて何もない。夢なんかみるな」と言い放った。泣きながら外に出た花音は、同い年くらいの子どもが学校に通っているのを見て、「どうして私は学校にいけないの」、「みんなと何が違うの」と悩む。

時は流れ、花音16歳。たまたま見ていたテレビでは、戸籍がない男性のインタビューが放送されていた。学校に行っていない・病院にも行ったことがない。花音も全く同じだった。

母親に問いただすと、すんなりと花音が無戸籍であることを認めた。

花音の母親は22年前に結婚したが、夫の暴力が激しくて逃げだした。その後花音の父となる男と出会うが、その男も妊娠を知った途端姿を消した。1人で花音を生んだ母親だが、出生届は受理されなかった。まだ夫との離婚が成立していないため、花音は血のつながりがない人物の戸籍に入ることになる。そうなると夫に居場所が知られてしまう。それを恐れた母親は結果として花音の出生届を出さなかったのだ。

激怒した花音だが、逆に「お前なんか生まれなければよかったんだ」とののしられる。その言葉で家を飛び出した花音。それからは、年をごまかして水商売をしながら生きていた。夜の世界では戸籍がなくてもそれほど困らずに生きてこられた。誤算だったのは夜の世界とは無関係な陸斗と出会ったことだった。

ここまでを渚ママに話した。戸籍がないことを誰かに話すのは初めてだった。

「花音は過酷な状況を生き抜いてきたサバイバーなんだよ。だから堂々と生きなさい」と渚ママは花音を励ます。その言葉を聞いて涙を流す花音だが、戸籍がない自分が赤ちゃんを産んだらその子はどうなるのかという不安はぬぐえないままだった。

「こぼれ落ちた砂~無戸籍のまま生きて~」第1話を読んでの感想

日本人なら誰もが持っているであろう戸籍。でも、その戸籍がない人が存在する。

無戸籍問題のことは知っていましたが、申し訳ないことに、正直あまり言ってピンときていませんでした。

この漫画を読んで、それがどれだけ苦しいことかを思い知らされました。作品中ではあまり多くは語られませんでしたが、16歳から22歳の現在まで、花音も相当悩み苦しんだことでしょう。

だけど、花音の出生届を出さなかった母を責めるだけでは何もならないような気もします。なぜなら花音の母も、夫の暴力に苦しめられた被害者だから。母親はどんな思いで花音を育ててきたのか?花音が家出をして以来登場していない母親は、今どうしているのか?そこが気になるところです。

花音に救いの手を差し伸べてくれたのは、スナックの渚ママでした。ママの存在は大きいですね。でも実際の所、戸籍のない女性が赤ちゃんを産んだとしたら、その赤ちゃんも無戸籍になりますよね。そうなると無戸籍の連鎖が続きます。それは辛いです。

鍵になるのは陸斗の存在ですね。一度は花音に会えたけど、再び見失ってしまった陸斗。2人はもう一度出会えるでしょうか?

私の希望的観測ですが、もし陸斗が、花音の言う通りの優しくあたたかい人であれば、無戸籍のことも一緒になって考えてくれるような気もします。というかそうであってほしいです。もし陸斗がそのことを知って逃げ出してしまうようであれば、花音は母親と同じ道を歩んでしまいます。そんなバッドエンドにはなってほしくないですね。

渚ママと陸斗のサポートによって花音が戸籍を取得し、無事出産して結婚するという結末であることを望みます。

もう1つ気になるのが、陸斗の家族。現時点では登場してきていません。花音が無戸籍者であることを責めたり、花音と陸斗の交際や結婚を強硬に反対するような人たちでなければよいのですが。と、まだ出てきていない、そして今後出てくるかどうか分からない人物のことまで、勝手に心配してしまった私です。

「こぼれ落ちた砂~無戸籍のまま生きて~」第2話一部ネタバレ

妊娠していることが分かった花音に、渚ママは病院受診を強くうながす。しかし花音は、戸籍がないから保険証もない、だから病院には行けないと反論する。だが、渚ママは譲らない。保険証がなくても診察は受けられる、赤ちゃんだけではなく花音の命にかかわる問題だからと言って病院まで同行した。

病院で診察を受けると、花音は妊娠12週目だった。赤ちゃんの心音も力強く、しっかり動いていた。だが、「次の健診までに役所で母子手帳を受け取ってきてください」と医師に言われ、花音は動揺する。

帰宅後、やはり戸籍がない自分は赤ちゃんを産むことなんて無理、産まないと花音は宣言する。そしてそのまま、近くの海岸に散歩に出かけてしまった。どうすれば花音を助けられるかと1人で考える渚ママ。するとそこに陸斗が現れた。

「こぼれ落ちた砂~無戸籍のまま生きて~」第1話まとめ

  • 主人公の花音は恋人の陸斗にプロポーズされるが、その後姿を消した
  • 1か月後花音はスナックで住み込みで働いていた
  • 陸斗の前から姿を消した後、妊娠していることに気づく花音
  • 今度はスナックからも姿を消そうとしたが、渚ママに止められる
  • 花音は渚ママに自分は無戸籍者であると告げる
  • 渚ママからの励ましに涙するが、無戸籍者の自分に子供を産む資格があるのかと悩む花音だった

社会問題にもなっている「無戸籍者」

当事者である花音のこれまでの人生は辛く苦しいものでした。恋人の陸斗と別れた後、新たな場所で渚ママという理解者に出会った花音。しかし、無戸籍の自分が赤ちゃんを産んでもよいのか?という大きな壁にぶつかります。

花音と赤ちゃんはどうなるのか?そして陸斗は花音と再会できるのか?第2話をお楽しみに。

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